会社勤めをする人に『ホウレンソウとは?』聞いたら、普通は報告・連絡・相談と答える人が多いでしょう。しかし、世の中にはこれに真っ向から異を唱える会社が存在します。
山田昭男氏の著書との出会い
自分はフィットネス産業という、ちょっとだけ一般とは違う会社で26年以上働いていました。もともとスイミングスクールのコーチとしてお客様に水泳を教えるという仕事をしていましたが、長くやるにつれて現場のスタッフをまとめる仕事や現場の経営方針考える仕事が増えてきました。
自分が水泳を教えるという仕事だけであれば、個人のスキルを上げていくだけで良かったのですが他のスタッフのスキルを上げることや、組織としての方針を考え組織に沁みこませる必要が出てきました。もちろん、会社の方針という大きな幹がありその事は理解した上で枝葉が別れていくように自分のカラーを出していく必要が生まれてきます。
そんなことを悩んでいたときに、自分はこの本と出会います。
ホウレンソウ禁止のインパクト
著者である山田昭男氏の本を手に取る人の多くは、ホウレンソウ禁止や残業禁止といった、普通の会社の逆を行く言葉のインパクトに惹かれているのではないかと思われます。自分もそうでしてた。自分が率いている現場の待遇としては決して良い環境とは言えず自慢できるものではありませんでした。自分自身が疲弊していることもありますが、会社とは仕事とはそういうものだと思っていたところにこの本に書かれていることですから、それはショックが大きかったこととすがる気持ちでこの本を手にしたことを覚えています。
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普通じゃ考えにくい方針
- ホウレンソウ禁止
- 残業禁止
- 休日数日本一
- 売れない商品も揃える
- 60歳からも給料据え置き
- ノルマなし
- 上司は部下を管理しない
どうでしょう、パッと思いつくだけでこれだけ書くことが出来るくらいインパクトが強く会社で働く人からすればうらやましい言葉が並びます。しかし、これらをやっても会社が儲かっていなければ何にもなりません。しかし、未来工業は創業以来赤字ゼロ。平成25年度の数字ですが、売上高314億円で営業利益38億円、営業利益率12%超と十分儲かっているようです。なぜ?こんなことしているのにこんなに儲かるのか?
インパクトのある言葉の意味を知る
インパクトのある言葉でこれらの本を手に取り1回読んだ感想は『いいなぁ~うらやましいなぁ~』くらいなものでした。しかし、2回目に読んでみると引っかかることが出てきます。なんでこれが出来るのか?言うのは簡単だけどなぜやれるのか?そうやって普通の会社のやり方を学んできている人になればなるほど疑問が沸いてきます。
徹底した差別化が全ての考え方
実は山田氏の考え方はシンプルできちんと本を読めばその一貫した考え方を理解することが出来ます。
- 世の中の会社の多くは儲かっていない
- 儲かっていない会社と同じことしても儲からない
- だから違うことをして儲かるようにする
つまり、全ては差別化で儲かる仕組みを作るという考え方です。他にない商品を作れば売れる。そしてそれを生み出すのは社員なのでいかに社員がやる気を出すことが出来るかを考える。ただそれだけなのです。
社長がどこまで社員を信じられるか
山田昭男氏は著書の中でこう語っています。
- 泥棒はどうやったらまじめに働くか
- 人は怠け者で、ずる賢く、自分の特になることしか考えない
- 人はオープンにされると、かえって泥棒できなくなるものなのだ
- 事務職員に通帳とハンコをすべて預けている
- 本当に返したかどうかはわからない。私がいちいち確認しないから
- 信じるところに「ダメ社員」は生まれない
自分はこの部分をもう何度も繰り返し読んでいます。なぜなら自分自身が怠け者で、ずる賢く、自分の特になることしか考えないに該当することを知っているからです。つまり、どんなことでも他人がどう解釈するかはわからないけれど、自分だったらこうするという基準に基づいてどうすれば喜んで働いてもらえるかを考え、それをひたすら信じる。ということなのです。ただ、それがどこまで出来るか?本を読んで理解出来ても実際に出来るかどうかは別の話です。
管理したければ管理するな、の謎かけ
自分のいた会社では現場と部下を管理することを何度も繰り返し言われてきました。部下を管理することとは、サボらせないで売り上げを向上する行動をするように目を光らせることとも言えると思います。しかし、自分はこれをやられて生き生きと仕事をする気にはなれないタイプの人間です。なので、他の人も同じじゃないかと考えたら管理することは逆効果になると納得できます。
この本には部下を管理するなと平気で書いてあります。社員は課長が管理して、課長は部長が管理して、部長は社長が管理して、社長は誰が管理するのか?その時点で管理すること自体の仕組みが破綻しているということです。実際に社長は占い師にお伺いを立てるんだそうです。となれば自分で考えることは誰が教えてくれるんでしょう?社員全員が占い師のもとに行けばいいのではないか?と。
管理することが社員の能率を上げることと同じ意味であるならば、管理しないで任せてしまうほうが社員の能率が上がるのではないか?ということになります。
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自分で考えて決めて行って出た成果は自分の物
この本の中でこういう一文があります。
- 食べかけの皿と手つかずの皿。食べたいと思うのはどちらか?
これは仕事を部下に任せるときに上司がどうするかの例えですが、肝心なのは上司が勘違いして部下に仕事を任せるのに自分がある程度処理してやっている、と勘違いしていないかどうかの問題です。
掃除が出来るスタッフは仕事も出来ると言われるのは、自分でどこが汚れているか判断してどうやって汚れを落とすかを自分で決められる人であり、そういうスタッフはその喜びを知っていてそのサイクルに入ることが出来る人と判断されるからです。仕事も同じで、自分で問題を見つけ問題を解決方法を考え実行してみて結果が出ればそれすべて自分の成果となります。自分の成果に直接繋がる仕組みを会社が作れば、社員は勝手にそのサイクルに入ってしまうというわけです。
自分が得をするから必死で考える
未来工業では、どんな改善案でも提出すれば500円が現金でもらえるシステムがあります。もちろんいろいろな規定がありますが書かれている内容で面白いのは、受け取った上司は中身を見ないで500円を渡さないといけないそうです。それ以外にも年間で一番多くの改善案を出した人には別にボーナスが出て、実際に会社で採用された場合も別にボーナスが出ます。仕事は苦手でも、何か問題がないか見つけることで自分の報酬になるわけですから、仕事の問題点を見つけるプロフェッショナルが自然と育ちます。
実は、これを真似して自分の現場でやってみたことがあります。会社には通さないで自腹で1万円用意して、1件100円で100件まで受け付けると告知したら、普段何の提案もしてこなかったアルバイトが何かないかと探し回って必死に書いていました。結局2日ほどで100件集まりその実験は終わりましたが、すごく面白かったのはスタッフ同士が同じものを書かないように勝手に暗黙の了解が出来ていました。こちらはそのルールを決めていないにもかかわらずです。この辺も管理しないで管理する方法かと思ったことを覚えています。
ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる
- 作者: 山田昭男
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/08/10
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本当は簡単なことではない
本を読んでもらえればわかることですが、書かれていることはインパクトがあり働く側としては働きやすい言葉が並んでいます。しかし、本当は意外と大変なことがわかります。
- 残業禁止だけど限られた時間で仕事を終わらせる難しさ
- 任せてもらえる喜びと自分で考える難しさ
- こうしないとダメと言わない変わりにどうしましょうと言わせない厳しさ
あらゆる仕組みは会社が儲かることに繋がっています。休みが多く早く帰れるという待遇が良い分だけ、きちんと働いて返さないと申し訳ないと思わせることに成功しているわけです。以前、この本のことを知る人と話したことがありますが、理屈はわかるけどどうやったらこれが出来るのかなかなか答えが出ませんでした。それでも、なんとなく出した答えは『周りの人間がそうなっていれば、そうならざるを得ないのではないか?』という結論しか出せませんでした。じゃあ最初はどうしたんだ?という疑問には思いっきり蓋をしておきました。
山田昭男氏の名文句
『実際にやってみたことあるの?』いつもこれです。この言葉にやられます。山田氏はこう言って読者に問いかけます。『やってダメならもとに戻せばいい』やらずに儲からないと嘆き、他社と同じことして儲からないと嘆くのであれば何でもいいからやってみるべきではないか?やってダメなら戻せばいいと。
差別化するならこの一冊
今回ブログで紹介してきた本はどれも実際に読んで今も手元においている本ですが、その中でもオススメするとしたらこの本を紹介しておきます。山田氏の教えではありませんが自分が読んだ本の中では他の本と違い、実際に社員が取り組んだ実例が加えてあり他の本とは差別化が図られている本です。
毎日4時45分に帰る人がやっているつまらない「常識」59の捨て方
- 作者: 山田昭男
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/08/02
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残念ながら山田昭男氏は永眠
残念ながら山田昭男氏は2014年に亡くなられています。その後未来工業がどうなっているかはわかりませんが、手元にある本は手放さず一生の宝物にしたいと思っています。
自分はこれからどうなるかわかりません。今は無職の身ですが、いつか仕事をするかもしれませんしこのままこうやってブログを書いているかもしれません。しかし、どちらにせよこの本に書かれたことはどこかで実践できるようにしていきます。
でわ、股!!