ひとり、焼き鳥屋さんのカウンターに座る。
ビールと焼き鳥を注文して、本を開く。
本は小説で、作者は伊坂幸太郎。
運ばれてきたビールを飲みながら焼き鳥をパクリ、そして本を読む。
目は文字を追っているが、耳にはカウンターの端に座る女性同士の会話が入ってきて、内容はよくわからないけれど、片方の女性の声が妙にハスキーなのが気になる。
それでもビールを飲みながら焼き鳥をパクリ、そして本を読む。
すると今度は隣に客が来て、男女二人なんだけれどカップルではなく、どうやら会社の同僚っぽい感じだけど、かといって仕事の悩みを話すわけでもなく、微妙な距離感の微妙な関係が気になる。
ビールのおかわりをして、少し冷めてきた焼き鳥をパクリして、ページをめくる。
さらに反対側に客が来て、男性二人が久しぶりの再会を喜びながら乾杯し、片方がお土産を渡しながら「身体のこと考えて甘いモノはやめた」と言い、もう片方が「あれからどうなった?」と聞き、その後は何かよくわからないデータを肴に飲んでいるのが気になる。
そうこうしているうちに待ち合わせの時間になったので、残ったビールを飲み干して、最後に楽しみに残しておいたポン尻(焼き鳥)を食べながら、「うん、ここのはもうひとつだな」とか思いながら、レジでお金を払って店を出る。
ダメだ!全然集中できない!
本の内容を覚えていない!
カウンターで本を読んでみるとか
かっこつけてみたけれど!
他が気になって仕方がない!
伊坂先生、ごめんなさい。
でわ、股!!