19歳でアルバイトとしてスイミングスクールでコーチの仕事を始め、それから48歳になる現在まで、多少途切れることもありましたが、同じ仕事を続けてきました。
自分で言うのも何ですが、ベテランと呼ばれてもおかしくない、それなりの経験を積んできたつもりです。
しかしそれでもたまに、お客さんからクレーム、いや、ご意見を、もらうことがあります。
ご意見といってもその種類は様々で、例えば担当コーチの指導能力が低く、毎月前払いで支払っている月謝に見合うレベルではない、と親に判断されて「コーチを変えて欲しい」と言われる場合や、逆に指導レベルには文句はないけれど、子どもに対して高圧的な態度で接していると受け取られ、「子どもが怖がっている」と言われることもあります。
ただこういった例と少し違うのが、「前のコーチと比べて…」という場合です。
その現場にいきなり現れた、それまでお気に入りだったコーチから代わった人は、見た目はおっさんで巨漢で、決して優しそうには見えません。
元々いるコーチから、今度来る新しいコーチはベテランで良いコーチだと聞いたとしても、ファーストインプレッションの見た目では「前のコーチに比べて…」となります。
おっさんで巨漢で見た目が決して優しそうには見えなくて、会社の命令で転勤が多かった自分も、前のコーチと比べられることが多々ありました。
しかし、さすがに何度も繰り返すうちに身に染みて、新しい現場に行っても、前のコーチに比べられても、受け入れてもらえるように、努力と工夫を積み重ねました。
そこで子どもを楽しませる手として、スイミングスクールには必ずある、ビート板を使ってピラミッドを作ってみせる、という技(という程ではないですが…)を繰り出すようになりました。
くだらない、といえばくだらないことなのですが、短時間で、言葉は不要で、子どもと打ち解けるには最適で、これをきっかけにいくつもの「前のコーチに比べて…」を乗り越えてきました。
しかし、クレームの矢というのは、どこから飛んでくるかわかりません。
完璧と思われた、ビート板ピラミッドにもクレームがつきました。
しかも、子どもから…
「あのコーチは、不真面目だ」
「子どもよりも、コーチが遊んでいる」
たったひとりのご意見でしたが、それ以来、ビート板ピラミッドは封印され、また新たな「前のコーチに比べて…」を打ち破れる技の開発が、始まりましたとさ。
でわ、股!!