先日、週に2回だけ働かせてもらっている職場の上司と、初めて飲みに行きました。
ただ、会社組織では上司であっても、年齢も仕事の経験年数もこちらが上なので、割と気楽に、しかし、ちゃんと敬意を払いつつ、じっくりと話をすることが出来ました。
そこで、色んな話をしたのですが、当然ながら仕事の話にもなりました。
仕事はスイミングスクールで子どもに水泳を教えるコーチで、自分は30年ほどやっておりますが、相手（以下、上司）はまだ始めたばかりです。
話の流れとしては、以前、自分のサブに入った上司が、そのときの感想として「ちょっと思っていたのとは違っていた」という意見が出たので、それについて話し合うことになりました。
当たり前ですが、水泳のコーチは子どもに水泳の指導をして、上手くする（もしくは泳げるようにする）のが仕事であり、目の前の子どもに話しかけたり、手足に触れて動きを教えたり、そういうのが大事だと、上司は思っていたそうです。
しかし、自分の場合、目の前の子どもを適当にあしらっているように見えたのが、「思っていたのと違う」ポイントだそうです。
そこで、このような話をしました。
例えば、ひとりで10人の子どもを担当したとします。
（10人が多いかどうかは無視）
そこで、ひとりのコーチが目を合わせて教えれる数は、当然ながらひとりです。
では、それ以外の9人は、誰が面倒を見ますか？
もし、その9人のうち誰かが溺れていたら、誰が助けますか？
そして、ひとりと9人だと、どちらが危険度が高いですか？
そのときは居酒屋さんのカウンターでしたので箸を使って説明しましたが、図にするとこんな感じです。
もちろん、10人全員の安全を確保するのがコーチの絶対的な仕事であり、ひとりと9人の命を天秤にかけるような話ではありません。
ただ、経験の浅いコーチは、どうしても目の前のひとりの子どもに注意が集中し、その他の子どもは「台の上にいるから大丈夫」とか思ってしまい、目を離した隙に何か起きたとしても、それすらわかりません。
つまり、自分が思う上手いコーチは、目の前の子どもを指導していながら、他の子ども（ここでは9人の子ども）の方に目をやり、何か異変があれば声をかけたり出来るということです。
これが、上司がサブに入ったときに感じた違和感の原因で、自分が目の前の子どもを適当にあしらっていたのは、目線を他の子どもの方にやっていたからだと思われます。
このことを知っている自分は、他のコーチの能力を測るとき、「目の前の子ども以外が見えているかどうか？」で判断します。
例えば旅先で見つけたスイミングスクールにぶらり訪問し、見学室からプールを覗き、コーチが子どもに水泳を教えている姿を見て、早ければ数十秒で上手い下手の判断が付きます。
そして、これが出来るかどうか？がコーチの境界線であり、このことを知らずに育ったコーチは、いくらベテランでも下手なままです。
ただ、このことは保護者には伝わらず、「ちゃんと教えてもらっていない！」とクレームの火種になるのでは？と思われるかもしれません。
しかし、目の前以外の子どもに目をやっていると、コーチが指導していないときにサボっている子どもや、逆に頑張っている子どもを発見することが出来ます。
そして、そのタイミングでサボっている子どもは注意して、逆に頑張っている子どもを褒めてあげれば、その子どもの行動は良くなりますし、それを保護者が気付いてくれれば、コーチの能力と視野の広さを理解してくれます。（気付かれないこともあるけれど･･･）
あと、これは大人でも同じですが、やっぱり「誰かが見てくれている！」とか「がんばりを認めてくれた！」というのはちょっとした感動を生み、それで「もっとガンバロウ！」となれば、その力はコーチの指導力なんかよりもっと上で、いわゆるスイッチを押すことも出来ます。
というわけで、安全面にも、子どものスイッチを押すためにも、「目の前以外の子どもを見る」のは、とても有効な技術なのですが、なにせスイミングスクールとしては「ある程度教えられるコーチ」を量産する方が儲かるので、なかなか技術を広めたり教える流れにならなくて、これが出来ない（もしくは知らない）コーチが多いような気がするのは、自分だけでしょうか？
ま、自分も聞かれたら答えますけれど、わざわざ教えることもないので、偉そうなことは言えませんけどね。
最後に、もし、アナタの子どもさんが通うスイミングスクールに、目の前しか見ていないコーチがいたら、要注意･･･かも？
でわ、股！！
