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TAJIRI著「プロレスラーは観客に何を見せているのか」感想のハナシ

久々に本を買いました。

かつてWWEの一員として「プロレス版メジャーリーガー」呼ばれ、現在はフリーとして活躍するTAJIRI選手が書かれた、いわゆる『プロレス本』です。

プロレスラーは観客に何を見せているのか

プロレスラーは観客に何を見せているのか

  • 作者:TAJIRI
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 単行本
 

先日行われた新日本プロレスの東京ドーム大会(イッテンゴ)にて、内藤選手がオカダ選手に勝ってハッピーエンドとなるところを、KENTA選手が乱入してぶち壊した事件(?)が起きまして、そのことを予想するようなことが書かれているらしい、という風の噂を耳にして、購入にいたりました。

で、ちゃんと最後まで読みましたので、感想などを書いてみます。

 

簡単な内容

基本的には、TAJIRI選手のプロレス人生を振り返りながら、自身が考える「プロレス観」、いや、「プロレス論」といった方が正しいでしょうか、そういうことが書かれています。

他のプロレスラーが書いている、それぞれのプロレス人生がまとめられている本はたくさんあり、決してそれらがつまらないわけではないのですが、良くも悪くも、ここまでプロレス論に踏み込んでいる本は少ないような気がして、大変興味深く読ませていただきました。

 

「プロレスはキャラクター産業だ」の大変さ

この本の一番最初(まえがき)に書かれているのが、「プロレスはキャラクター産業だ」という、WWEのボスであるビンス・マクマホンの言葉で、世界で一番成功したプロレス団体のトップが、口癖のように唱えている言葉だそうです。

「プロレスとは?」そう問われたとき、スポーツでもなく格闘技でもなく「表現の世界」と捉える著者は、この言葉を聞いたときは理解できなかったのが、今では最重要事項となっている、と書かれています。

確かにプロレスファンとしては、それが好きになるかどうかは別として、レスラーにキャラクター性があるほうがわかりやすくて感情移入や応援がしやすいのは間違いありません。

ただ、その大変さを物語るエピソードが、この本には書かれています。

かつてECWでスペル・クレイジーとライバル関係となったとき、陽気なキャラクターであるスペル・クレイジに対し、「俺はヒールになろう!」と決めて四六時中考え抜いてTAJIRIというキャラクターが生まれましたが、その後WWEでさらなる悪への進化を遂げようと苦心していると、キャパティシーを越えてしまったのか、その悪のキャラクターが乗り移り、そうとう病んでしまったそうです。

「プロレスはキャラクター産業だ」の言葉に偽りはないのでしょうが、やっぱり大変なんですね。

 

KENTA乱入を予想していた?

この本を買うきっかけになったのは、最初にも書きましたが「KENTAの乱入を予想するようなことが書かれているらしい」という、風の噂を耳にしたからです。

で、その風の噂の元はこれなんだろうなぁ~というのが、コチラです。

かつてプロレスには、ファンの人たちから心底嫌われ、カミソリ入りの封筒を送りつけられるような悪党が多数存在していた。ファンの人たちはわざわざチケットを購入し、そんな憎たらしい彼らへブーイングを送ることにより、贔屓のレスラーと一緒に「本気で戦っていた」のだ。

~中略~

いま、プロレス界には「楽しいプロレス」という概念が蔓延している。

~中略~

「なるべくクレームのこないプロレスをしよう」としているようにも僕には見える。それでは、どんどんプロレスがツマらなくなり、やがて地球上から消え去ってしまうだろう。

(232~233ページより)

引用する部分がまずくて上手く伝わっていないかもしれませんが、つまり、プロレスとは、人生の縮図というかそんな簡単に白黒ハッキり付けられないモノなのだから、昔あった「両者リングアウト」や「反則裁定」などというような不透明決着があってもいいんじゃないの?というようなことが書かれています。

前述した、新日本プロレスの東京ドーム大会(イッテンゴ)のエンディングも、内藤選手がオカダ選手に勝って、リング上で締めのマイクアピールを「普通に」やればハッピーエンドだったのでしょうが、それをKENTAが乱入することでぶち壊して「普通じゃない」状態を作り上げ、それで観客の怒りがMAXになったとしても、それはそれでいいのでは?という解釈になるのでしょうね。

ちなみに、この件に関して、個人的に「KENTA、凄いな」と思ったのが、とあるSNSで見かけた、「この試合を観た小学生のうちの子が、「こいつ最低!大っ嫌い!」と顔を真っ赤にしている」というような発言でした。

確かに昔に比べたら動きのキレは悪くなっているかもしれませんが、それを別の何かで補う努力をされていて、それが実になった瞬間だと、個人的は思いました。(決してKENTA選手のファンではありませんが・・・)

 

個人的に驚いた、最近のヒール像

長年プロレスファンをやっていると、実はヒール(悪玉)のレスラーはいい人で、 逆にベビーフェイス(善玉)の方が人間としては嫌な奴であることが多いと聞きます。

それが本当かどうかは別として、観客を本気で怒らせることが仕事であるヒールは、決して馬鹿で不真面目な人には出来ない仕事であり、中途半端なヒールレスラーは、ファンに見透かされて舐められて、すぐに終わるような気もします。

しかし人間誰しも嫌われることより好かれることを望むわけですから、そういう意味では、ヒールになりたがる人間は少ないのかもしれません。

そんなことを、何となくではありますが、理解している自分としては、本文に書かれた内容に少々驚きました。

少し前、SNSに「本当のヒールは嫌われることを恐れない」と書いたら、すぐにこんなリプがいくつも書き込まれた。

「それでは商売になりませんよ」

「オファーがこなくなりますよ」

時代は変わったな、と思わずにいられなかった。

(232ページより)

これ、深読みというか、ヘンな方向で捉えると、「本当のヒール」=「リアルな悪人」と思われいて、それで商売にならないとかオファーが来ないとか言われているような気もしたのですが、たぶんそうではないですよね?

なら、プロレスの何たるかを知らずに、「ヒールなんて不要!」「みんなベビーでいいじゃん!」みたいな感覚なんでしょうかね?

ただのおっさんプロレスファンには、全く理解できません。

 

感想「面白かった!」そしてプロレス初心者にもオススメしてもいいかも

この本を読んだ感想としては、「大変面白かった」です。

単にプロレス人生をなぞるだけでなく、それらの経験に基づくプロレス論について書かれているところは非常に楽しく読ませていただき、これからのプロレスの見方にも多大なる影響があるでしょう。

そして、自分のような長年プロレスを見ている人間は楽しめるけれど、そうじゃない、まだプロレスを見始めたばかりの方には・・・とは、ちょっと思ったのですが、意外とイケるかもしれません。

 

というのは、先日、ブログやYouTubeで仲良くさせていたただいている方が、このようかツイートをされていました。

このように、長い間プロレスファンをやっていると、それを知らない人に「プロレスとはどういうモノなのか?」を説明するのに困る場合があります。

しかし、著者であるTAJIRI選手の言葉をお借りすれば、「プロレスとは、スポーツでも格闘技でもなく表現の世界である」という説明で出来ます。

もちろん、それを言ったところで「?」となるかもしれませんが、「八百長」といったマイナスなイメージの言葉を使わなくとも、伝わるのでは?

そして、それでもわからなかったら、ぜひこの本をオススメしてはいかがでしょうか?

プロレスラーは観客に何を見せているのか

プロレスラーは観客に何を見せているのか

  • 作者:TAJIRI
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 単行本
 

 

最後に。「見せているのか」より「魅せているのか」の方が・・・

というわけで、これで終わりにしようと思ったのですが、最後に個人的な意見を。

「プロレスとは表現の世界である」のならば、せっかくなので「魅せる」のほうがよかったのでは?みたいなことを思いましたが、これって上から目線ですかね?コジマさん。

 

 

でわ、股!!