昨日書いた記事が、(そこそこ)多くの方に読まれたようです。
ブログに書くことによって「悪い事例を広めることに加担するのでは?」とか思って書こうかどうかすら悩んでいたので、正直多くの方の読まれたことに「大丈夫かな?」と弱腰な姿勢でいますが、「終わったことは仕方なし!」そして「同じ過ちを繰り返さないために!」と考えるようにして、弱腰ながら前に進んで行こうと思っています。
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さて、そんな自分もスイミングスクールでコーチの仕事をしていますので、同じような事故を起こす可能性のある人間です。
昨日もブログを書いたあと現場に向かい、情報を共有するスタッフと「怖いね」といいながらプールに入り、なんとか無事にレッスンを終えることが出来ました。
そして翌日ツイッターを確認すると、このようなつぶやきを見つけました。
(しんすけさん、引用させていただきます)
ティップの溺水事故の件に限らず、子供のクラス、陸、水共にコーチ死角作り過ぎだと思う事が多い🤔
— しんすけ (@striker1029) March 20, 2019
ハインリッヒの法則とか教えてないんだろうなぁ🤔
このしんすけさんのプロフィールを見ると「フィットネス系管理職」とありますので、多少の違いはあると思いますが同業者であり、「ハインリッヒの法則」という言葉が出ているということは、そこそこの経験を積まれた方ではないか?と想像しております。
(あと、どうでもいいことなのですが、しんすけさんも同じプロレスファンだと思われ、それが嬉しかったりしております)
「ハインリッヒの法則」とは?
自分が「ハインリッヒの法則」という言葉を学んだのは、以前長年勤めていた会社で、耳にタコが出来るくらい言われてきました。
で、ウィキペディアには、このように書かれています。
ハインリッヒの法則(ハインリッヒのほうそく、Heinrich's law)は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。「ハインリッヒの災害トライアングル定理」または「傷害四角錐」とも呼ばれる。
簡単に説明すると「1の重大事故が起きるときは、29のちょっとした事故と、300のヒヤリとすることが起きている」ことであり、これを逆に考えると、「ヒヤリとすることが300あるということは、29のちょっとした事故と、1の重大事故が起きる」と捉えることが出来ます。
なので自分が会社から何度も繰り返し言われてきたのは、「いかにヒヤリとすることを減らすか?」であり、いくら重大事故を減らそうと努力しても、ヒヤリとすることが起きているのであれば、その努力は無駄となる。ということです。
スイミングスクールでの重大事故は「溺水」
そもそも「ハインリッヒの法則」とは、アメリカでの労働災害を調査したものであり、ちゃんとしたデータを解析して、出た結果です。
蛇足となるかもしれませんが、この「ハインリッヒの法則」に出てくる「1:29:300」という比率が、災害だけじゃなく世の中の事例は全てこの比率で成り立つののでは?と取り上げられ、それが爆笑問題のラジオ番組のコーナーになり、それをまとめた本も出版されています。
爆笑問題のハインリッヒの法則―世の中すべて300対29対1の法則で動いている (祥伝社黄金文庫)
- 作者: 爆笑問題
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で、真面目なハナシに戻りますが、この「ハインリッヒの法則」における「1つの重大事故」をスイミングスクールに当てはめると、間違いなく「溺水事故」になります。
もちろんそれ以外にも重大事故はありますが、プールという特殊な環境で起きる事故として考えた場合、他では起きない重大事故としては「溺水」となるでしょう。
「300のヒヤッとすること」を何とするか?
「スイミングスクールにおける重大事故は溺水」については、たぶん異論はないと思いますが、「300のヒヤリとすること」をどのレベルにするかは様々な論があると思われます。
そして、そしてそれをどう捉えているか?で、スイミングスクールの危機管理能力がわかるかもしれません。
例えば、プールサイドに子どもがいるシーンで、3つの事例を挙げてみます。
- プールサイドを走る子ども同士が衝突しそうになる
- プールサイドを子どもが走る
- プールサイドで子どもが立っている
(1)については多くの人が「危ない!」と感じるでしょうから、「ヒヤリとする事例」に入りやすいでしょうが、(2)の「走る」については、ヒヤリとするかどうかは意見が分かれるかもしれません。さらに(3)の「立っている」なんて、当たり前のことで、ヒヤリすることの方が過剰なのでは?と思われるかもしれませんが、これを怖いと感じるスタッフが多いスイミングスクールは安全だと思います。
「コーチが子どもを見ていない」をヒヤリとするか?
先ほどの事例を「溺水事故」に当てはめた場合、「コーチが子どもを見ていない」ことをヒヤリとするかどうかで、重大事故(溺水事故)を防ぐことができるかどうかになります。
ここで一般の方からすれば、「コーチが子どもを見るのは当たり前でしょ!」と思われるかもしれませんが、レッスンの間にはさまざまなことが起こり、コーチが他のことに気を取られる場面は多々あります。
例えばレッスンに遅れてきた子どもの対応をしたり、子どものつけているゴーグルが緩いからゴムの調整をしたり、隣のコーチから話しかけられて対応していたり、そもそもコーチがひとりの子どもを教えているときも、「コーチが子どもを見ていない」状態となるわけですから、意外とそういう状況が生まれているわけです。
ヒヤリとするから改善する
で、それを他のコーチが見たときにヒヤリとするのであれば、その状態が続くことを「怖い」と感じ、そうならないように改善していきます。
しかし、スイミングスクールのコーチの仕事というのは、どうしても視野が狭くなりがちで、普段から「安全第一」と唱えているコーチ(自分)でも、熱くなって焦点が定まってしまい、周りが見えない状態になることがあります。
それを第三者から見てもらい、その意見を素直に受け止めることでやっと改善できるものなので、簡単なことのように思えて、意外と難しいことです。
ヒヤリを減らすから重大事故が起きない
つまり、「ハインリッヒの法則」的に考えると、コーチが見ていないことを「ヒヤリとする事例」と捉えることで改善し、その積み重ねが「重大(溺水)事故」を起こさないことに繋がるということです。
前述したように、いくら重大事故を減らそうと努力しても、ヒヤリとすることが起きているのであれば、その努力は無駄となる。わけで、コーチが見ていないことを何とも思わない場合、その回数が300に達したときは、重大事故が起きてもおかしくない、ということですね。
どこでも起きる可能性がある
前回書いた記事の内容と重複しますが、スイミングスクールも人材不足状態であり、高いスキルを持ったスタッフの確保や育成は、かなり難しい状態だと思われます。
高校まで水泳をやっていた大学生に、数週間の研修をしただけで一人前のコーチとしてデビューさせ、「あとは自分で勉強しなさい」と言うだけでスキルを高める努力をしない(もしくはできない)スイミングスクールは、たくさんあると思われます。
なので、ここまで書いてきたように、「コーチが見ていない」ことを「ヒヤリとする事例」と捉える教育をすることができておらず、最初に紹介したしんすけさんのつぶやきにあるように、「ハインリッヒの法則とか教えてないんだろうなぁ」と思われても仕方がありません。
もちろんそういう教育をしている現場もたくさんあるでしょうが、それはそれで「厳しい職場」と捉えられて若いスタッフの確保が難しくなるという問題もありますので、なかなか簡単な話ではありません。
というわけで、残念ながら「スイミングスクールにおける重大事故」は、どこででも起きる可能性があり、ヒヤリとすることが積み重なったとき、再び溺水事故が起きるかもしれません。
もちろん自分も当事者としてそういう事故を起こす可能性のある人間ですので、気を引き締めて、ヒヤリすることがないように、精進して参ります。
でわ、股!!
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